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令和4年4月以降に不妊治療の保険適用となる治療

令和4年4月より体外受精などの基本的な不妊治療が保険適用となります。ただ年齢制限や回数制限などが設けられているため、不妊治療を行う方は注意が必要です。このページでは不妊治療の保険適用となった背景やメリット・デメリットなどを分かりやすく解説するので、不妊治療を検討中の方は是非チェックしてください。

不妊治療が保険適用となった理由

日本社会において少子化は、今すぐにでも解決しなければならない重要な課題です。しかし晩婚化や新型コロナなどの影響を受け、少子化は加速の一途をたどっています。その少子化を食い止めるために不妊治療が保険適用となったのです。

不妊治療による高額な治療費の問題

「子供が欲しい」と望んでいるにもかかわらず、様々な要因で授からない方にとって不妊治療を検討するケースも多々あります。しかし不妊治療は保険が適用されないため、費用面によって諦めることも。2017年の厚生労働省による調査では不妊治療の体外受精の平均費用は1回につき38万円、顕微授精が43万円ほどでした。また不妊治療によって支払った治療費の総額は100万円~200万円がもっとも多く、中には300万円以上も支払っているケースもあったようです。これほどの治療費がかかるとなれば、子供を授かることを諦めてしまうケースが増え、少子化が加速すると考えられます。そのため不妊治療の費用問題は解決すべき課題と言えるでしょう。

不妊治療への認識を広げる必要性

不妊治療の費用が、なぜここまで高額なのかというと公的保険が適用されないからです。自由診療だからこそのメリットもありますが、どうしても自由診療だと病気ではないという捉え方をする方も多いのが現状でした。そのため不妊治療のために通院する人の多くが、仕事を休んで通院することへの後ろめたさなどを感じてしまうでしょう。しかし公的保険が適用となれば、不妊治療は治療すべき病態という認識が社会に広がり、不妊治療への差別意識も少なくなると考えられます。

新たに保険適用対象となる治療法

従来は公的な保険が適用される不妊治療はほとんどありませんでした。今回の改正によって、条件さえクリアしていれば不妊治療の費用は原則3割負担で済みます。

  • タイミング療法
    自然に妊娠することを目的の治療法のことです。基礎体温・超音波検査・血中ホルモン量などを測定することで、排卵日のタイミングを予測します。排卵期に応じて性交渉を行えば、妊娠の確率を上げることが期待できるでしょう。つまり特別な治療をするのではなく、アドバイスをする治療のため身体への負担も少ない方法と言えます。
  • 人工授精
    排卵日の前後に子宮内に精液を直接注入する方法のことです。人工授精は基本的に男性側の精子異常または性交渉の障がいなどがあるケースに用いられることが多いでしょう。また、一般的にはタイミング療法の次のステップで行われます。
  • 体外受精や胚移植
    体内から卵子と精子をそれぞれ取り出し、体外で受精させ細胞分裂をした胚を子宮内に移植して妊娠を促す治療法を体外受精と言います。
  • 顕微授精
    体外受精のひとつで、卵子を取り出し、その卵子に注射針などで直接精子を注入する方法です。基本的には男性の精子に異常がある際に用いることが多い治療でしょう。

上記のような不妊治療が保険適用となります。

第三者の精子・卵子を使用した治療は対象外

不妊治療の全てが保険適用となるわけではないのです。たとえば第三者の精子や卵子などを使用した場合は、不妊治療の保険適用とはなりません。また近年問題となっている第三者の精子提供による人工授精、卵子・胚の提供なども対象外となるので注意しましょう。

不妊治療の保険適用となる条件とは

43歳未満の女性が対象

男性自体に年齢制限はありませんが、治療開始した時点で女性の年齢が43歳未満の女性が対象と定められています。また事実婚であっても対象はなりますが、事実婚関係を確認できる書類などの提出が必要となるケースもあるでしょう。つまり年齢自体の制限はあるものの、幅広い方々が活用できる制度と言えます。

年齢によって保険適用できる回数が変動する

  • 40歳未満:子供一人につき通算6回まで
  • 40歳以上~43歳未満:子供一人につき通算3回まで

上記のような階数制限があります。これまでは特定不妊治療費助成事業と呼ばれる助成金制度が活用されていましたが、2022年4月より保険適用となることで原則3割の自己負担による治療です。

保険適用のメリット

治療の標準化が図られた

保険診療を行うためには、病気治療の標準化を図る必要があり、治療の方法や進め方の統一を行う必要があります。これまで不妊治療は一人一人に合ったオーダーメイド治療を行っていたので、標準化を図るのは非常に難しいと考えられていました。しかし保険適用となったことで年齢・回数制限はあるものの、不妊治療の標準化が図られたと言えるでしょう。また標準化されたことで、治療の方法や進め方が分かりやすくなったため、不妊治療にチャレンジしやすくなったと感じる方もいるはずです。

経済的な負担軽減

不妊治療を受ける大きなハードルは、治療費用面でした。全額自己負担となるため、どうしても数十万円~百万円以上の費用が発生し、体外受精や顕微授精などへのステップを諦めてしまう方も少なくありません。保険適用となることで自己負担が大幅に軽減し、治療の選択肢も広がるでしょう。

社会的な理解が得られやすい

自由診療となると、どうしても不妊自体は治療の対象ではないというマイナスのイメ―ジが抱かれやすく、治療への理解が得られにくい状況でした。そのため不妊治療のための遅刻・早退などは職場から理解されずに、どうしても不妊治療をしていることを打ち明けられないなどのマイナスも。しかし保険適用となることで、治療が必要だという認識が社会に広がり、不妊治療への理解が進みやすくなるでしょう。

保険適用のデメリット

負担額が増えるケースも

保険適用となることで、ほとんどのケースでは経済的負担が軽減されると言われていますが、保険診療・先進医療として認められていない治療を望む方にとっては負担額が大幅に増える可能性があります。日本の法律では歯科医療の一部を除き、保険診療と自由診療を同時に治療することはできません。そのため保険診療・先進医療として認可されていない治療を一つでも行えば、保険診療の対象だった治療も含めて全額自己負担となってしまうのです。これまでは助成制度を活用し支払った治療費用の一部分が戻ってきていましたが、その助成がなくなったことによって経済的負担が大きくなるケースもあるでしょう。

医療格差が広がりやすい

保険診療を行えば、保険診療の審査を行う機関に治療を行った旨の申請する業務が必要です。さらに先進医療を行うことで、より申請手続きも複雑になるでしょう。もちろん比較的規模の大きな病院であれば問題はありませんが、小さなクリニックなどでは申請業務が難しくなることも。そのため中には先進医療を行わない病院やクリニックも出てくる可能性があります。

また先進医療として認められていないものの、一定の治療効果が期待できる治療に関しては全額自己負担の自由診療で行う方法しかありません。そのため高額な治療費を支払える経済力のある方だけが、そのような治療を受けられる状況になりやすいでしょう。つまり医療機関・経済状況による医療格差が生じる可能性があります。

治療の開発が進まなくなる

不妊治療法は個人のクリニックで開発されたような技術が用いられているケースも多々あります。その治療法が世界中に広がることで、不妊治療である生殖医療が支えられているのです。しかし保険適用となり標準化されれば、そういった新たな治療の開発が進まなくなる可能性もあるでしょう。

不妊治療の今後の課題とは

混合診療導入の検討

不妊治療の保険適用に関しては、非常にメリットの大きな法改正だと言えるでしょう。しかし保険診療だけでは、十分な治療ができないケースもあります。そうしたケースを解消するためには保険診療と自由診療を組み合わせる混合診療の導入を実現した方が良いという声も多いのです。

ただ混合診療を取り入れることで患者の負担が増える、エビデンスのない医療が行われるなどのデメリットもあります。そのため混合診療を導入するためにはルール作りが不可欠となるでしょう。

年齢制限の緩和

不妊治療に公的保険を利用するためには、女性の年齢が43歳未満でなければなりません。これは助成制度に設定されていた年齢制限から考えられたものです。もちろん妊婦や胎児の身体状況は年齢にも大きく影響するのはありますが、年齢制限を設けることによって差別と捉える方もいるでしょう。たとえ妊娠の確率が決して高くない年齢の高い方であっても、治療の見込みがあるならば不妊治療を行うことを検討する必要もあります。

少子化対策の別の施策も必要

不妊治療の保険適用に関しては、少子化対策の一役を担うと言われています。しかし日本の少子化問題を解決するためには、もっと根本的な対策を講じる必要があるでしょう。

保険適用後の人工授精に関する費用例

保険適用で自己負担の軽減につながる

保険適用となったとしても、どうしても人工授精などの段階に進めば治療費は高額になりがちです。そんな場合は高額療養費制度を利用することが可能です。支払った治療費が1か月あたりの上限額よりも上回った場合は、上限額を超えた医療費が返金される制度を高額療養費制度と呼びます。この上限額は加入者の所得金額によって決められており、体外受精の場合は助成の所得金額で決まるでしょう。そのため窓口で自己負担額が高額になったとしても、しっかりと手続きさえすれば自己負担額を減らすことができます。

ただ高額療養費制度は保険適用の治療に限定されるので、自由診療や先進医療の場合は活用できません。

また不妊治療が保険適用になったことで、民間の医療保険で手術給付金がある場合は対象となることも。また先進医療特約が付いているケースもあるので、自由診療である先進医療も民間の医療保険が適用されます。

特定不妊治療費助成制度は終了で、実質的に負担増になる人も

2022年3月までは国の助成制度として「特定不妊治療費助成制度」がありましたが、保険適用となったことで助成制度は終了となっています。標準的な体外受精や顕微授精などの費用負担は助成制度よりも公的保険を活用した方が経済的負担は少なくなるでしょう。しかし全ての不妊治療が保険適用となったわけではないため、反復不成功の方・着床不全の方・不育症の方などが行う治療は保険適用外です。また着床前診断に関しても全額自己負担となるため、従来の助成制度の方がお得だったというケースもあります。

ただ2022年3月より前に体外受精を行っている場合、特定不妊治療費助成制度の利用回数に残りがあるなら経過措置として、4月以降も1回だけ助成制度を受けることが可能です。

不妊治療の保険適用に関するQ&A

Q.保険診療を受けるためには、どんな準備が必要ですか?

A.受診する場合には不妊治療の治療歴や、受診したことのある医療機関などの情報を正確に医師に伝えましょう。また、できればパートナーと二人で受診することが望ましいです。

Q.保険診療を受けるためには、どの医療機関を受診したら良いですか?

助成金の指定医療機関であれば、保険診療の施設基準を満たしている経過措置があります。各医療機関が地方厚生局に届け出を出すことになるため、かかりつけの医療機関などに確認してください。

Q.事実婚でも、保険適用の対象となりますか?

A.事実婚であっても対象となります。ただ受診した際に医療機関より事実婚の関係性について確認される、書類の提出を求められることもあるので、医療機関に確認してください。

Q.保険適用となる前に凍結保存した胚は、保険適用後でも使えますか?

A.助成金の指定医療機関や学会に登録した施設によって凍結された胚であれば、基本的に保険診療でも使用できます。受診される医療機関に相談してください。

Q.保険適用で行う胚移植の回数は、過去の回数も含まれますか?

A.保険診療による胚移植の回数の上限は、保険診療下で行われた胚移植の回数だけをカウントします。そのため過去の治療実績、助成金の利用実績は含まれません。

Q.先進医療を受ける場合は、特別な手続きが必要となりますか?

A.治療内容や費用への同意は必要ですが、とくに患者側が行う手続きはありません。先進医療は医療機関によって内容がことなるので、受診される医療機関と相談してください。

Q.複数回採卵を実施することはできますか?

A.保険診療で採卵を行う場合は、治療開始する前に医師による治療計画に従い行います。そのため必要だと判断されれば、複数回採卵を行うこともあるでしょう。