横浜市内の体外受精が受けられるクリニックを紹介しています
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不妊治療にはいくつかの種類があり、その中で実施件数が増加し続けているのが顕微授精です。顕微授精には色々な方法がありますが、現在はICSI(卵細胞質内精子注入法)が主流となっています。顕微授精は、精子が著しく少ない方や体外受精・胚移植で受精できなかった方に適しているとされています。
『妊活の最終手段』と言われることがある顕微授精は、不妊症の夫婦の5組に1組の割合で選択されていると言われる治療法。現在日本で出産している体外受精児は、約6割が顕微授精による妊娠となっているそうです。顕微授精が気になる方は、受精のしやすさや体外受精との違いだけでなく、リスクや気をつけるべきことも抑えておきましょう。
体内での受精が厳しい状態で子作りを進めるときには、体外受精や顕微授精といった生殖補助医療(ART)を選択することになります。
体外受精では、卵子が入った容器に精子をふりかけます。精子みずからが卵子に突入して自然に受精するのを待つ方法で、卵子1個に対して約10万/mlの良好な運動精子が必要とされています。それに対して、顕微授精は、卵子1個に良好な精子が1匹いれば治療を行うことが可能です。1匹の精子を選んで、卵子に直接針で注入して受精の手助けを行います。
顕微授精の受精率は50~70%ほどで、人為的に受精を促すこともあって体外受精よりも受精率が高いと言われています。ただし、顕微授精は、針を差し込んで精子を注入するので、そのときの刺激で卵子の膜が破れて変性してしまう可能性があります。それが起こる確率は高いわけではありませんが、体外受精では発生しないデメリットとして挙がります。
最初に排卵誘発を行って卵子を採取。顕微授精で使う卵子は成熟している必要があるので、顕微鏡で確認を行います。精子についても同様に顕微鏡で確認して、良好な状態の精子を1匹選びます。選んだ精子は、インジェクションピペットと呼ばれる細いガラス針に吸引。その状態で、卵子にインジェクションピペットを差し込みます。
卵子を極力傷つけることなく注入をするために、卵子の中心点に針先を入れるようにします。3/4ほど差し込んで細胞膜を破り、その後は、精子が卵子の細胞質に馴染むまで精子の頭部が出たままの状態をしばらくキープ。一定時間経過後にインジェクションピペットを卵子から抜いたときに、精子が細胞質内に留まれば無事成功となります。
顕微授精(ICSI)が世界で初めて行われたのは1992年です。それから約30年が経過しましたが、ほかの治療法よりも歴史が浅いこともあって、今もなおリスクの検証が慎重に行われています。
とはいえ、顕微授精は、ほかの体外受精胚移植法と比べて危険性や大きなリスクが確認されているわけではありません。現在も、多くの方が不妊治療として顕微授精を行っていて、日本では年間数千人の赤ちゃんが顕微授精を経て誕生しています。以下では、顕微授精のリスクとなる可能性があるものも含んで挙げています。
自然妊娠では、妊娠してから流産する確率は約10~15%と言われています。それに対して、体外受精や胚移植による妊娠は、流産率が約20%になるそうです。顕微授精は体外受精による治療法なので流産率は20%となり、自然妊娠よりも流産率が高いことになります。
子どもを産むことを考えるときに、流産率の数値は決して無視できるものではありません。顕微授精を検討するときは、「自然妊娠よりも流産する可能性が少し高くなる」ことを頭に入れておきましょう。
自然妊娠と顕微授精を比べたときには、胎児に異常がでる確率はほとんど差がないとされています。胎児への影響や関連性についての意見が挙がることもありますが、医学的に証明されている段階ではありません。
しかし、体外受精胚移植法では、早産や低出生体重児、先天異常、帝王切開などの発生率が、自然妊娠よりもやや増加したという報告があります。これらの発生率の増加については、最近では治療法よりも自然妊娠しにくい夫婦側に要因があるのでは?と考えられることもあります。ですが、はっきりとした結論はまだ出ていない状態です。
リスクという点では、顕微授精はもしかしたら胎児へ影響が出る可能性があるかも?と考えておくのが無難かもしれません。
顕微授精によって生まれてきた子どもは、父親の遺伝子の影響を受けて男性不症になるかもしれないと言われています。精子が少ない方や無精子症の方は、染色体や遺伝子に異常がある可能性があります。その異常が赤ちゃんに受け継がれた結果、父親と同様に男性不妊症となる恐れがあるのです。
しかし、これは、顕微授精に限った問題ではなく、通常の体外受精や胚移植でも同じようにリスクが発生します。顕微授精が、男性不妊症を引き起こすという話ではありません。男性不妊症の影響が気になる方には、治療前に染色体検査を受けることをお勧めします。
日本産婦人科会の「顕微授精に関する見解」(参考文献:日本産科婦人科学会雑誌第73巻第8号、2006年4月改定) (参照元:【PDF】http://fa.kyorin.co.jp/jsog/readPDF.php?file=73/8/073080915.pdf#page=8)には、対象となる夫婦に関する記載が書かれています。それによると、男性不妊や受精障害などのせいで、顕微授精以外で妊娠する可能性が極めて低いもしくはないと判断された夫婦が対象とのことです。それによると、男性不妊や受精障害などのせいで、顕微授精以外で妊娠する可能性が極めて低いもしくはないと判断された夫婦が対象とのことです。
顕微授精は、現時点ですべてのリスクが明確になっている治療法ではありません。安全性の観点で、ほかの治療で妊娠するならリスクが明らかではない治療をする必要はないという考えが反映されています。体内受精や体外受精の治療を数回行って、妊娠の可能性が感じられないときに、初めて顕微授精が選択肢に出てくる流れとなります。これが、顕微授精が『妊活の最終手段』といわれる理由です。
顕微授精をするときに、重要度が高いのが精子の質です。このときに参考となるのが、WHO(世界保健機関)が定めている運動率や精子の数などの基準値です。しかし、この基準を満たしていても受精しないことは珍しくはありません。WHOの基準値はあくまでも、妊娠するための最低限の値だからです。
精子の質については、クリニックによって意見が異なります。WHOの基準を満たしているから良しとするところもあれば、詳しい検査が不可欠としているところもあります。
顕微授精は保険適用外で、費用の負担が大きい治療です。そのことを踏まえると、治療の前に精子の精密検査を受けるのもひとつの手です。精子の実力を正確に把握することで、成功確率のアップや顕微授精の回数の抑制などにつながります。
顕微授精を検討するときに、気にしておくべきなのは受精率と妊娠率の違いについてです。1匹の精子を直接卵子に注入する顕微授精は受精率が高いとされていますが、それは体外受精と比較した場合です。
そして、受精する確率が高い状態でも、妊娠しないこともあります。妊娠するには受精卵が子宮内膜に着床する必要があり、着床しない原因がある状態では妊娠することができません。
また、年齢による妊娠率についても意識する必要があります。30歳から40歳では、妊娠率が15%ほど変わってきます。顕微授精を選ぶことで受精率は高くなりますが、年齢による妊娠率を上げるような効果はありません。顕微授精を検討するときは、受精率の高さだけでなく、自身の妊娠率についても考えておいた方がよいでしょう。