体外受精へステップアップするタイミングとは

こちらの記事では、30代や40代の体外受精について、また高齢での出産で考えられるリスクなどをまとめています。不妊治療を検討されている方は、ぜひ参考にしてみてください。

30代・40代でどう違う？体外受精の成果とリスク

体外受精に限らず、妊娠率や流産率は年齢の影響が大きいことがわかっています。一般的に、30歳ごろから緩やかに妊娠率と出産率の低下が始まり、35歳ごろからは妊娠率・出産率の低下が顕著になってくるとともに流産率が上昇していきます。

下記では、体外受精における各年代の妊娠率と流産率について解説します。

30代前半〜後半における着床率と流産率の目安

30代の体外受精の妊娠率と流産率を、「30〜34歳」「35〜39歳」に分けてご紹介します。

• 30～34歳：体外受精による妊娠率は40〜45％程度、流産率は15～20％程度
• 35～39歳：体外受精による妊娠率は30〜40％程度。流産率は20〜30％程度

30〜34歳の女性の場合、20代と比較した場合体外受精の成功率はやや低下するものの、流産率はほぼ変わらないとされています。また、35〜39歳の場合は体外受精の成功率が低下し、流産率は30代前半よりも上昇します。30代後半でも毎週期3〜4割の妊娠が期待できるものの、中には妊娠までに何回かの体外受精が必要となるケースもあります。

40代前半〜後半における着床率と流産率の目安

続いて40代の妊娠率と流産率ですが、ここでは「40～42歳」「43～45歳」「46歳以降」に分けてご紹介します。

• 40～42歳：妊娠率は20～30％程度、流産率は30～45％程度
• 43～45歳：妊娠率10～20％程度、流産率は30〜50％程度
• 46歳以降：妊娠率は約5％以下、流産率は約60％以上

上記の通り、40歳以降になると妊娠率が低下する点に加えて流産率が上昇します。特に46歳以降は流産率が約60％以上と大幅に上昇するとされています。

年齢別に異なる治療戦略と工夫

不妊治療をどう進めていくかは、年齢によって大きく異なってきます。そのため、年齢に合わせて治療計画を立てることが大切です。

30代：時間と選択肢を活かす治療計画

30代前半は、例えば治療初期のうちはタイミング法など負担が少ない方法からスタートし、必要に応じて人工授精や体外受精のように段階的なアプローチを行っていく事が一般的とされています。特に、30代前半のうちは卵子の質も良好であることが多く治療の成功率も高いといえます。30代後半になると妊娠率が徐々に低下していくため、十分な治療計画の検討が大切になってきます。

40代：良好胚を得るための集中アプローチ

40代の場合には、年齢による妊孕力を考慮した場合、自然妊娠に近い形となるタイミング法や人工授精の場合いには妊娠率が上がらない可能性があります。そのため、40代の不妊治療では、早い時期に体外受精や顕微鏡受精に取り組むことにより妊娠率を上げることにつながっていきます。

その場合、妊娠率を高めるためにも良質な胚（受精卵）を得ることが重要になってきます。そのためには、まずはできるだけ良質の成熟卵を採取する必要があり、排卵誘発剤を使用して卵巣を刺激して多くの卵を発育させるなどの方法がとられます。

ただ、不妊治療で保険治療の対象となるには治療開始時に女性が43歳未満であることが条件であり、胚移植回数にも制限があります（40歳以上43歳未満の場合1子ごとに通算3回まで）。

高齢妊娠に伴う医学的リスク

一般的に高齢妊娠とは35歳以上での出産を指すケースが多いですが、初産婦で35歳、経産婦で40歳以上とする場合もあります。高齢妊娠の場合、母体と胎児の双方のリスクが高まるとされています。ここでは、どのようなリスクが考えられるのかをご紹介していきます。

妊娠中に高まりやすい母体リスク

高齢妊娠の場合、母体のリスクとしては、妊娠20週以降〜産後12週までの間に高血圧となる妊娠高血圧症候群、妊娠中に初めて発見された糖代謝異常を指す妊娠糖尿病のほか、帝王切開分娩になる確率も高く、早産・流産のリスクも高まるとされています。また、産道や子宮口は年齢とともに固くなっていくことから難産となる可能性もあります。

そのほか、高齢での出産の場合にはそうではない場合と比べると産後の子宮収縮がうまくいかずに元の大きさに戻らない子宮復古不全のリスクも高まるとされています。産後の回復がうまくいかない場合、母乳が出にくくなる、産後うつなども考えられます。

胎児・新生児の健康リスク

高齢妊娠の場合、胎児・新生児にとっても健康リスクが高まります。例えば、21トリソミー（ダウン症候群）や18トリソミー（エドワーズ症候群）、13トリソミー（パトウ症候群）といった染色体異常などのリスクも考えられます。

例えば、21トリソミーの場合、一般的に1,000人に1人の割合で出生するとされていますが、母親の年齢が40歳で出産したケースについては、その確率が100人に1人まで増加します。

横浜市の周産期医療連携体制のポイント

妊娠22週から生後7日までの期間を周産期といい、この期間は母体や胎児、新生児に異常が生じやすいことから、緊急時の医療体制が必要とされています。横浜市では、県の周産期救急医療システムを補完するべく、診療所やクリニックのバックアップとしての周産期救急連携病院と、より高度な医療を提供する周産期センターの運営補助を行っています。周産期救急連携病院は、24時間365日診療所や病院から紹介された救急患者の受け入れを行っており、周産期センターでは、リスクが高く高度な医療機能が必要とされる救急患者受け入れの役割を担っています。

さらに、同市では高度な治療を可能とする新生児集中治療室（NICU）と、新生児治療回復室（GCU）の整備を支援しています。

治療のゴール設定をどう考えるか

不妊治療を始める場合に考えておくことのひとつとして、「どこをゴールとするか」という点が挙げられます。この点については、治療の見通しや心身にかかる負担、パートナーの希望などを擦り合わせながら計画に進めていくことが大切です。

治療期間と試行回数の目安を決める

一回の体外受精には、通常およそ4〜6週間かかります。この点を踏まえ、「どれくらいの治療期間か」「何回治療を行うか」という目安設定を行うことが、無理のない治療につながります。

また、保険診療として実施される体外受精の施行回数（一子あたり）には、「女性が40歳未満の場合は一子6回まで」「女性が40〜43歳未満の場合は3回まで」という制限があります。

多様なライフプランを踏まえた選択肢

不妊治療を考える上では、多様なライフプランの選択肢を踏まえた上で検討することが大切とされています。これは、女性のキャリアやライフスタイルの多様化が背景としてあるため。例えば「子どもを持つか」「持つとすれば何人希望するのか」「仕事や経済面との両立はどうするのか」といったように、さまざまな選択肢があるため、個々のライフプランに合わせて治療計画を立てていくことが重要といえます。

治療の途中でそれぞれの考え方や状況も変わることがありますので、柔軟なゴールのイメージを持っておくことも大切です。

パートナーと医師で共有する治療終了の基準

不妊治療を終了させるかどうか、という点は、ひとりひとりの状況によって大きく異なります。例えば身体的・精神的・経済的な負担や年齢、これまでの治療経過や今後の見通しなど、さまざまな面から総合的に考える必要があります。そのため、治療に関することはパートナー同士で十分に話し合うことに加えて、担当医からの専門的な助言を受けながら、治療終了の時期について基準を決めることが重要になってきます。

まとめ

こちらの記事では、30代・40代の体外受精の成果とリスクや高齢での妊娠に伴う医学的リスク、治療におけるゴールの設定などをまとめてきました。不妊治療を始めるにあたってはさまざまな疑問や不安が出てくることが多いといえます。そして身体的・精神的に負担を感じるケースも多いため、担当医とよく相談しながら治療について検討し、進めていくことが大切であるといえます。