体外受精では、採卵によって卵子を回収できても、すべての卵子が受精するわけではありません。また、正常に受精したと確認できても、その後すべての胚が順調に細胞分裂を続け、胚盤胞まで育つとは限りません。
「卵子は採れたのに1個も受精しなかった」「受精したと聞いたのに、その後分割が止まった」と言われると、「卵子が悪かった?」「精子に問題がある?」「次も同じ結果になる?」と不安になる方もいるでしょう。
ここで大切なのは、「受精しないこと」と「受精後に分割・発育しないこと」は、体外受精の中では異なる段階の問題だということです。
受精しない場合には、卵子の成熟状態、精子の状態、通常体外受精か顕微授精かといった受精方法などを振り返ります。一方、正常受精した後に分割が止まった場合には、その後の胚発育について確認する必要があります。
この記事では、体外受精で受精しない場合に考えられること、通常体外受精と顕微授精の違い、受精したのに分割しない場合の考え方、次回の採卵・受精方法を検討する際に確認したいポイントについて解説します。
体外受精では、採卵から胚移植まで複数の段階があります。
各段階で次へ進める卵子・胚の数は変わります。
そのため、
は、それぞれ別の数字として確認する必要があります。
「10個採卵できたから10個受精する」「受精した胚がすべて胚盤胞になる」というわけではありません。
治療結果を振り返る際は、「どの段階で進まなくなったのか」を整理することが重要です。
| 状態 | どの段階か | 主に確認すること |
|---|---|---|
| 受精しない | 卵子と精子を受精させた後、正常受精が確認できない | 成熟卵数、精子の状態、受精方法など |
| 分割しない | 正常受精後、細胞分裂が進まない | 胚発育、卵子・精子由来の要素など |
| 途中で分割が止まる | 細胞分裂を始めた後に発育停止する | どの段階まで発育したか、胚発育の経過など |
つまり、「受精しなかった」のか、「受精はしたものの胚が育たなかった」のかによって、次回の治療で確認するポイントが変わります。
通常体外受精や顕微授精を行った後は、培養室で受精状態を確認します。
受精確認では、卵子の中に形成される前核などを観察します。
卵子と精子が正常に受精すると、一般的には母親由来と父親由来の2つの前核が確認されます。これを「2PN」と呼びます。
培養室では、このような所見などから正常受精しているかを確認し、その後の培養へ進めます。
ただし、受精の評価は前核数だけを機械的に見るものではなく、観察するタイミングや胚の状態なども踏まえて胚培養士が評価します。
受精後に確認される前核の数などによっては、一般的な正常受精とは異なる状態と評価されることがあります。
そのため、体外受精の結果は単に「受精した・受精しなかった」だけではなく、
などを確認することが重要です。
通常の体外受精では、採卵した卵子の周囲に調整した精子を加え、精子自身が卵子へ到達して侵入することで受精を目指します。
この過程のどこかが十分に進まない場合、正常受精が確認できないことがあります。
採卵できた卵子がすべて成熟しているとは限りません。
卵子には成熟段階があり、通常体外受精や顕微授精を行ううえでは、卵子が適切な成熟状態にあることが重要です。
たとえば採卵数が10個だったとしても、実際に受精操作へ進められる成熟卵が10個あるとは限りません。
そのため、受精率を見る際は採卵数だけではなく、「成熟卵が何個あり、そのうち何個が正常受精したのか」を確認する必要があります。
通常体外受精では、精子自身が卵子の周囲にある構造を通過し、卵子内へ侵入する必要があります。
そのため、
などが受精に影響する場合があります。
重度の乏精子症や精子運動不良など、男性因子が明らかな場合には顕微授精が選択されることがあります。
「精液検査では問題がなかったのに、なぜ受精しなかったの?」と感じる方もいるでしょう。
精液検査では精子濃度や運動性などを評価しますが、それだけですべての受精能力を予測できるわけではありません。
そのため、精液検査で大きな異常が確認されていなくても、通常体外受精で受精率が低かったり、まったく正常受精しなかったりする場合があります。
この場合、前回実際にどの程度受精したかという治療結果そのものが、次回の受精方法を考える重要な情報になります。
受精には、精子が卵子へ侵入するだけでなく、その後卵子内で正常な受精過程が進む必要があります。
そのため、卵子の成熟状態や受精後に起こる細胞内の反応などが関係する場合もあります。
ただし、受精しなかったという結果だけを見て、
「卵子の質が悪かったから」
と原因をひとつに決めることはできません。
通常体外受精で正常受精が確認できなかった場合、次回の治療で顕微授精(ICSI)を検討することがあります。
顕微授精では、胚培養士が選んだ1個の精子を細い針で卵子の中へ直接注入します。
そのため、通常体外受精で必要となる「精子が自ら卵子の中へ侵入する工程」を補助できます。
過去に通常体外受精で、
といった結果があった場合には、次周期に顕微授精を検討することがあります。
顕微授精では精子を直接卵子内へ注入しますが、それだけで受精が完了するわけではありません。
精子注入後には卵子が活性化し、その後正常な受精過程が進む必要があります。
そのため、顕微授精を行っても正常受精しない場合があります。
顕微授精は受精の可能性を高めるために用いられる方法ですが、「受精を保証する治療」ではありません。
通常体外受精よりも顕微授精の方が「高度な治療だから妊娠しやすい」と考える方もいるかもしれません。
しかし、男性因子や過去の受精障害などがない場合に、すべての卵子へ一律に顕微授精を行えば出生率が高くなるとは限りません。
受精方法は、
などを踏まえて選択します。
「ICSIの方が高度だから」という理由だけで選ぶのではなく、その人にICSIを行う理由があるかを確認することが大切です。
顕微授精でも、すべての成熟卵が正常受精するわけではありません。
顕微授精では、
といった過程を経ます。
精子を卵子内へ入れる工程を補助できても、その後のすべての生物学的な受精過程を人工的に完了させるわけではありません。
精子が卵子内へ入った後には、卵子が活性化して受精過程を進める必要があります。
この過程が正常に進まない場合、顕微授精を行っても正常受精が確認できないことがあります。
卵子活性化には卵子側・精子側の双方が関与していると考えられており、受精障害を繰り返す場合には治療経過を詳しく確認します。
顕微授精は、基本的に成熟した卵子に対して行います。
採卵できても未成熟な卵子が多ければ、顕微授精に使用できる卵子数が少なくなることがあります。
そのため、顕微授精後に受精しなかった場合も、「ICSIをしたのにダメだった」とだけ考えるのではなく、採卵数や成熟卵数から振り返ることが重要です。
正常受精が確認された後は、受精卵が細胞分裂を繰り返しながら胚へ発育します。
一般的には、
正常受精
↓
細胞分裂
↓
初期胚
↓
桑実胚
↓
胚盤胞
というように発育していきます。
ただし、正常受精した胚のすべてが同じように発育するわけではありません。
正常受精が確認できたものの、その後の細胞分裂が進まない場合があります。
この場合は、精子と卵子が受精するところまでは進んでいるため、「受精障害」とは別の段階として考えます。
細胞分裂を開始したものの、途中で胚の発育が止まることもあります。
たとえば複数の受精卵が得られた場合でも、
が分かれることがあります。
「正常受精した=必ず移植できる胚になる」というわけではありません。
胚の発育には、卵子と精子から受け継いだ遺伝情報を含め、さまざまな要素が関係します。
そのため、分割が止まった結果だけから原因をひとつに特定することは難しい場合があります。
胚発育には卵子の成熟状態や細胞内の状態などが関係します。
また、女性の年齢が上がるにつれて卵子の染色体異常が増えることが知られており、その後の胚発育や妊娠にも影響します。
ただし、ひとつの胚が途中で発育を停止したからといって、その原因を「卵子の質」と断定することはできません。
精子は、受精時に卵子へ侵入するだけでなく、その後の胚発育に必要な父親由来の遺伝情報を提供します。
そのため、精子側の要因が胚発育に関係する可能性もあります。
一方、通常の精液検査だけですべての精子側要因を評価できるわけではありません。
正常受精した胚であっても、すべてが同じ発育能力を持つわけではありません。
複数の胚を培養していると、順調に胚盤胞まで育つ胚もあれば、途中で分割が止まる胚もあります。
1個の胚が発育停止したことだけを理由に、夫婦のどちらかに特定の異常があると判断することはできません。
女性の年齢は体外受精の治療結果を考えるうえで重要ですが、「年齢が高い=通常体外受精では受精できない」と単純に考えるものではありません。
年齢は特に、卵子・胚の染色体異常や、その後の胚発育、妊娠・出産の可能性と関係する重要な要素です。
一方で、年齢だけを理由として顕微授精を行えば受精率や出生率が改善するとは限りません。
そのため、受精方法を選択する際には年齢だけではなく、精液所見や前回の受精結果なども確認します。
AMHが低い方の場合、「AMHが低いから受精しなかったのでは?」と考えることがあるかもしれません。
しかし、AMHは主に、
を考える指標です。
AMHは、成熟卵1個が正常受精するかどうかを直接測定する検査ではありません。
AMHが低い場合は採卵できる卵子数が少なくなり、その結果として受精へ進める卵子の母数が少なくなることがあります。
しかし、「AMHが低いから受精しない」という意味ではありません。
受精障害が起きた場合には、「受精0個」という結果だけを見るのではなく、採卵から受精までの数字を順番に確認します。
まず確認したいのは、採卵できた卵子のうち、受精操作に使用できた成熟卵が何個だったかです。
たとえば、
という結果と、
では、同じ「受精0個」でも振り返る内容が異なります。
採卵数だけで受精率を考えず、成熟卵を何個受精操作に使えたかまで確認しましょう。
通常体外受精を行った場合には、採卵当日の精子についても確認します。
精子濃度や運動性、処理後の状態などがどのようであったかを確認し、次回も通常体外受精を行うのか、顕微授精を検討するのかを考える材料にします。
受精しなかった場合には、
を確認します。
過去の結果によっては、一部の卵子をIVF、一部をICSIとする方法が検討される場合もあります。
前回、通常体外受精で受精が成立しなかった、または受精率が非常に低かった場合には、次回に顕微授精を検討することがあります。
ただし、
「1個も受精しなかったから次回は必ずすべてICSI」
と一律に決まるわけではありません。
成熟卵数、精液所見、これまでの治療歴などを踏まえて医師・胚培養士と相談します。
正常受精は確認できたものの、その後胚が育たなかった場合には、「受精率」ではなく「胚発育」を振り返ります。
確認したいのは、
などです。
「受精率」と「胚盤胞まで育った割合」は別々に確認しましょう。
一度の採卵周期で正常受精が得られなかったからといって、次回も必ず同じ結果になるわけではありません。
採卵周期によって、
などが異なる場合があります。
また、前回通常体外受精で受精障害が起きた場合には、次周期に顕微授精を検討するなど、受精方法を見直すこともあります。
ただし、受精障害を繰り返す場合には、より詳しくこれまでの治療結果を比較することが重要です。
複数回治療している場合は、各周期の結果を並べると、どの段階が課題になっているのか分かりやすくなります。
| 確認項目 | 1回目 | 2回目 |
|---|---|---|
| 採卵数 | 確認 | 確認 |
| 成熟卵数 | 確認 | 確認 |
| 受精方法 | IVF/ICSI | IVF/ICSI |
| 正常受精数 | 確認 | 確認 |
| 分割した胚数 | 確認 | 確認 |
| 胚盤胞数 | 確認 | 確認 |
「毎回うまくいかない」という印象だけでなく、
採卵・成熟・受精・分割・胚盤胞のどこにボトルネックがあるのか
を整理することが重要です。
受精や胚培養の多くは、採卵後の培養室で行われます。
そのため、治療結果については医師だけでなく、必要に応じて胚培養士から説明を受けることも役立ちます。
たとえば、
を確認すると、次回の治療方針を考えやすくなります。
複数回にわたり受精障害や胚発育停止が続き、現在の治療方針について別の医師の意見も聞きたい場合は、セカンドオピニオンを検討することもできます。
その際は、採卵数だけではなく、成熟卵数、受精方法、正常受精数、胚培養結果などが分かる資料を持参すると相談しやすくなります。
受精結果の説明を受ける際は、以下を確認してみましょう。
「受精しませんでした」で終わらず、何個の成熟卵にどの方法を行い、どの段階で進まなくなったのかまで確認することが大切です。
横浜で体外受精を受けるクリニックを選ぶ際は、妊娠率だけでなく、受精・胚培養の結果をどのように振り返り、次の治療へ反映しているかにも注目しましょう。
「受精率○%」という数字だけでは、自分の治療がうまくいかなかった理由までは分かりません。
重要なのは、
を確認してもらえるかです。
採卵後の受精・胚培養は培養室で行われます。
そのため、クリニックを比較する際は、胚培養士から受精や胚発育について説明を受けられるか、培養結果が次回の治療方針へどのように反映されるかも確認しましょう。
受精方法は、単純に「ICSIの方が高度だから」という理由で選ぶものではありません。
男性因子の有無や過去の通常体外受精での受精結果、成熟卵数などを踏まえ、通常体外受精と顕微授精をどのように使い分けているか確認しましょう。
A. あります。採卵できた卵子がすべて成熟しているとは限らず、成熟卵であってもすべてが正常受精するわけではありません。卵子の成熟状態、精子の状態、受精方法などを確認します。
A. 精子側の要因が関係する場合はありますが、卵子側の要因などもあり、受精しなかったという結果だけから精子が原因と判断することはできません。採卵数、成熟卵数、精子状態、受精方法などを総合的に確認します。
A. 過去に通常体外受精で受精しなかった、または受精率が低かった場合には、次周期に顕微授精を検討することがあります。ただし、成熟卵数や精液所見なども踏まえて個別に判断します。
A. 必ずではありません。顕微授精では精子を卵子内へ直接注入しますが、その後に卵子活性化などの受精過程が正常に進む必要があります。そのため、ICSIを行っても受精しない場合があります。
A. あります。正常受精した後でも細胞分裂が進まなかったり、途中で胚発育が止まったりすることがあります。受精しない場合とは別の段階として、胚がどこまで発育したのかを確認します。
A. AMHは主に卵巣予備能や採卵数を考えるための指標で、成熟卵1個が受精するかどうかを直接示す検査ではありません。AMHが低い場合は採卵数が少なくなり、受精へ進める卵子の母数が少なくなる可能性があります。
A. 必ずしも同じ結果になるとは限りません。次周期は成熟卵数、精子状態、前回の受精方法や受精結果などを確認し、必要に応じて受精方法を見直します。
体外受精では、採卵できた卵子がすべて成熟しているとは限らず、成熟卵のすべてが正常受精するわけでもありません。
また、正常受精した後も、すべての胚が順調に分割して胚盤胞まで育つわけではありません。
そのため、治療結果を振り返る際は、
「採卵数 → 成熟卵数 → 正常受精数 → 分割した胚数 → 胚盤胞数」
というように段階を分けて確認することが重要です。
通常体外受精で受精しなかった場合には、成熟卵数や精子状態などを確認し、次周期に顕微授精を検討することがあります。
一方、顕微授精を行えば必ず受精するわけではなく、精子を注入した後の卵子活性化などが正常に進まない場合もあります。
また、「受精しないこと」と「受精後に胚が分割しないこと」は異なる段階の問題です。
正常受精が確認できている場合は、その後どの段階まで胚が発育したのかを確認しましょう。
体外受精で思うような結果が得られなかった場合は、「受精しなかった」「胚が育たなかった」という結果だけを見るのではなく、どの工程まで順調に進み、どこで止まったのかを整理することが、次回の受精方法や培養方針を考える手がかりになります。
受精しない・胚が思うように育たない場合のクリニック選びでは、採卵数だけでなく成熟卵数、精子の状態、IVF・ICSIの選択、正常受精数、その後の胚発育まで振り返り、次回の治療方針へ反映してもらえるかも確認したいポイントです。
当メディア「yokoniiruyo」では、横浜にある体外受精対応クリニックを調査し、「40代から体外受精を検討している」「第二子不妊で子どもと一緒に通いたい」「男性不妊の専門治療まで相談したい」など、ご夫婦の状況に合わせた体外受精クリニックおすすめ3選を紹介しています。採卵・受精から胚培養、胚移植まで相談できるクリニックを探している方は、治療先を考える参考としてぜひご覧ください。
体外受精のクリニック選びで大切なのは、ご夫婦の状況に合った治療を受けられることです。
横浜にあるクリニック14院※の口コミや実績を分析し、お二人の状況に寄り添った3院を調査しました。
40~41歳の妊娠率が、2025年1月時点で開示されている最新(2022年度)の全国平均の妊娠率が約30%(※1)に対して、約50%(※2)と平均を上回る実績があります。
卵子への負担を軽減する培養技術も活用し、妊娠が難しい患者様へのサポートに注力しています。
保育士常駐のキッズルームを設けており、「親子待合室」としても利用できます。
通常の待合室とは扉で区切られているため、待ち時間も周囲の視線を気にせず、お子さまと一緒にいられます。通院回数が多い体外受精でも安心して通えるクリニックです。
不妊の原因に多くみられる男性不妊症の治療実績(※3)において神奈川県内1位(※4)を誇る病院です。一般男性の約7人に1人(※5)にみられる「精索静脈瘤」、約100人に1人(※5)に発症すると言われる「無精子症」まで、他院では対応が難しい男性不妊治療を受けられます。
※妊娠率(臨床妊娠):移植後、エコーにより胚が子宮内に確認された割合を指します
※1参照元:【PDF】日本産科婦人科学会ARTデータブック※2022年時点。2024年のデータはまだ公開されておりません(https://www.jsog.or.jp/activity/art/2022_JSOG-ART.pdf)
※2参照元:メディカルパーク ベイフロント横浜公式※2024/1/1~2024/9/30時点(https://medicalpark-bf-yokohama.com/chiryo_jisseki/)
※3参照元:「男性生殖器疾患」の治療実績数を、便宜上“男性不妊症”のランキングとしています。この件数には、他の病気の治療も含まれることがあります。
※4参照元:caloo(神奈川県の男性不妊症の治療実績)※DPC対象病院・準備病院・出来高算定病院の統計 (2022年4月〜2023年3月退院患者)(https://caloo.jp/dpc/disease/746/14)
※5参照元:横浜市立大学附属 市民総合医療センター公式(2025年1月時点)(https://www.yokohama-cu.ac.jp/urahp/section/generative/danseifunin.html)
※6 お電話での問い合わせは月曜・水曜・金曜のみ8:00~18:30、火曜・土曜8:00~16:30、木曜8:00~13:00、日曜8:00~13:00 (指定患者様のみ)、祝8:00~15:00